2021/09/13 14:38
宇野です。今日は「都市」特集の目玉の一つであるマサチューセッツ工科大学メディアラボの酒井康史さんとSFCの田中浩也さんとの対談です(僕も司会を兼ねて議論に参加しています)。
ここで僕たちが議論しているのは「もの」から都市を考えるという視点です。都市開発(建築や交通)でもコミュニティ(「いい話」系の何か)でもなく、不動産ではない「もの」から都市を考えています。コンテナが世界の流通を変えた話はあまりも有名ですが、ここではペットボトルとか、携帯電話のバッテリーとか、そういった「もの」が都市構造そのものに影響を与えるシナリオや、Amazonなどのものの流通の変化の与える都市の生活への影響について議論しています。
この種の議論はたいてい経済誌的な「イノベーションで儲かる」みたいな話か、左翼的な「Amazon的なシステムは労働者を部品扱いし、消費者の生活から人のぬくもりを奪う」みたいな話になりがちで、まあ、僕もイノベーションはあったほうがいいだろうし、グローバルな流通インフラにおけるエッセンシャルワーカーの環境はきちんと整備しないまずいと思うのだけれど、興味があるのはもっと別の話で、要するにミクロな「もの」の性能とその流通を変えることで都市そのものを変えていくという思考実験がしたかったわけです。
そしてこの難しいお題というか、僕の無茶振りに酒井さんと田中さんは全力で(かなり困りながらも)答えてくれています。収録は難航して「出口が見えないので今日は一度解散」といったことを2回ほど繰り返したのですが、難産だったぶん、いちばん遠くまで思考をもっていけた記事になったと思います(改めて酒井さん、田中さん、ありがとうございました!)。
こういうマニアックな企画をしれっと混ぜておける(お題的に単体では商業的になかなか採算が難しい)のは雑誌の醍醐味で、実はこういうページが一番良かったりするものです。なので、せっかく「雑誌」を手にするのだから、読んでくれた人はお目当ての記事以外もパラパラとめくって、気になるものを目に止めてもらえたらと思います。