2021/09/13 14:45
宇野です。この『モノノメ』創刊号は「都市」の特集です。この特集のコンセプトに「人間外」の生物の視点から都市を読む、というものがあることは以前書いたとおりですが、このアイデアを思いついたきっかけのひとつが東千茅さんの『人類堆肥化計画』という本でした。
僕はこの1、2年、人間「外」の事物とのコミュニケーションということに関心があって、そういうことをテーマにした本も実はコツコツと書いているのだけれど、そのために関連しそうな本を漁っていて、その中で知り合いに薦められたのが東さんの本でした。東さんは奈良の山奥で、稲と大豆の栽培と養鶏を営み、ほぼ自給自足の生活をしている人で、それも別にスローフードに憧れているとか、環境に優しい生き方をしている自分が好きだとか、そういうことは一切なく単にそれが「面白い」からやっている、と主張しています。人間「外」とのコミュニケーションの楽しさを味わうために、自分は農業をやっているのだ、と。そして、彼はその生活を『つち式』というZINEで発信している。そんな人です。僕は『人類堆肥化計画』と『つち式』を読んで、この人に寄稿してもらおうと思いついて、TwitterにDMしました。今思えば共通の知り合いがそれなりにいたので、紹介してもらえばよかったのだけど……本を読んだ勢いでつい、やってしまいました。でも雑誌づくりにこういう「勢い」って大事だと思います。
本当は奈良にも取材に行きたかったのだけれど……それは次号以降に取っておきます。もしくは、このクラウドファンディングが1000%とかになったら、販促企画も兼ねてこの秋に遠征するのも(疫病の収まり方次第ですが……)いいかな、と東さんの都合をまったく考えず勝手に思っています。(東さん、もちろん、じゃまにならないタイミングでご相談させてください!)
ちなみに僕は東さんが公開している近影を見て、山奥で孤独に自給自足をしている気難しい青年……という印象を一方的に抱いていて、実はZoomで打ち合わせをする前にものすごく緊張していたのだけれど、話してみるととても穏やかで、さわやかな青年といった感じの人でとてもほっとしたのを覚えています。東さん、ごめんなさい。実は一方的にちょっと怖い人だったらどうしよう、と思っていました。
誌面ではそんな東さんの生活を紹介するエッセイと、東さんが撮影した田んぼや山の写真がたくさん掲載されます。東さんの文体からは人間の異種(動植物)とのコミュニケーションのもたらす愉悦が溢れています。その濃密な世界の一端に触れられる記事になっていると思います。お楽しみに。