2021/09/13 15:10
宇野です。今回取り上げるのは、連載「おいしいものにはわけがある」です。これは、編集部セレクトの「食べもの」を紹介していく、というただそれだけの記事なのだけれど、僕なりにすごくこだわった記事だったりします。それは一言でいうと「食べる」ということについてきちんと考えることです。
たとえば、ちょっと意識の高い会合とかで「食」の話題になると、すぐに環境負荷が低い食べ物だとか、身体にいい食べ物だとか、そういう話になる。僕はそれなりに環境問題には(「風の谷を創る」に参加しているくらいだし)関心があるし、健康にはかなり(月に100キロメートル走っているくらいだし)気を使っているのだけれど、この種の議論がちょっと苦手です。要するに「おいしい」ということを置き去りにして、政治的に「正しい」とか、健康管理的に「正しい」とかそういったことを優先する「食べる」ことの話は、言ってみれば「引きの強いタグをつけること」が目的化していて本質の部分を粗末にしているのではないか、と疑問に思うわけです。
そこで……今回はしっかり「おいしい」と感じたところから出発する記事をやってみようと考えました。なぜ、自分はこれをおいしいと感じたのか。どういうコンセプトで、どのような食材が、どう料理されているのか。そういったディティールを掘り下げることで、結果的にその周辺の物事が浮上してくる。それはもしかしたら環境のことかもしれないし、健康のことかもしれないし、働き方の問題かもしれないし、その食材の採れる土地のことかもしれない。この経路で「食べる」ことにアプローチするというのが最初に立てたコンセプトです。
初回の取材先は僕の好きなお弁当屋さんの「たかまつ」さんです。ここは高松さんという女性がひとりでやっているお弁当屋さんで、「風の谷を創る」の会合のときにメンバーの菊池昌枝さんが手配してくれたことをきっかけに知りました。シュウマイとか、きんぴらとか、野菜炒めとか、一見、地味なおかずが集まったなんでもないお弁当なのだけどれど、僕はすっかりこの弁当にハマってしまって、気がつけば毎回このお弁当を楽しみに会合に出かけるようになっていました。
記事ではこのなんでもないおかずの詰まったお弁当の何がそこまで人を惹きつけるのを、高松さんへの取材を交えながらたっぷりお届けしています。レシピ紹介でも、食レポでもない、ちょっと不思議な記事に仕上がっていると思います。読んだ人のお腹がすいたら勝ちだな、と思いながら編集しています。お楽しみに。